産業廃棄物「積み替え保管」許可の要件と、取得が「原則困難」とされる真の理由

降りしきる雨の中、近未来的な都市にそびえ立つ巨大な廃棄物の山と人々のシルエット

積替え保管とは

1. 法律上の定義

「積み替え保管」という言葉自体は、廃棄物処理法 第14条第1項(産業廃棄物収集運搬業の許可)に関連して定義されています。

  • 根拠法: 廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)
  • 許可の区分: 収集運搬業の許可は「積み替え保管を含む」と「積み替え保管を除く」の2種類に明確に分けられています。
  • 環境省の通知: 「産業廃棄物収集運搬車への積み替え保管に関する運用について」などの通知により、具体的な運用の細部が定められています。

2. 「直行」と「積み替え保管」の決定的な違い

ホームページで解説する際に、以下のポイントを深掘りすると読者の納得感が高まります。

① 荷下ろしの有無

  • 直行(保管なし): 現場で積んだゴミは、処分場に着くまで一度もトラックから降ろしてはいけません。また、別のトラックに積み替えることも禁止です。
  • 積み替え保管あり: 自社の施設で一度荷物を降ろし、「仕分け」や「まとめ荷」をすることが許されます。

② 保管のルール(実務上の重要点)

積み替え保管は「ただ置いておける」わけではありません。

  • 保管上限: 無制限ではなく、原則として「その場所から運び出す1日あたりの平均量の7日分」までしか置いておけません。
  • 期間の制限: ずっと置いておくと「処分(不法投棄)」とみなされるため、速やかに運び出す義務があります。

3. なぜ「積み替え保管」には別の許可が必要なのか?

  • 環境汚染のリスク: ゴミを地面に置くことで、雨水による汚染水の流出、悪臭、害虫の発生、騒音などが懸念されます。
  • 火災のリスク: 廃棄物の種類によっては自然発火や延焼のリスクがあるため、消防法との兼ね合いも出てきます。
  • 不法投棄の防止: 「一時保管」と言いながら、そのまま放置して逃げてしまう悪質業者を防ぐため、非常に厳しい施設基準が設けられています。

4. 実務上の「積み替え」の具体例

どのようなシーンで「積み替え」が発生するのか、具体的なイメージを伝えます。

  • 積載効率の向上(ハブ&スポーク): 2tトラック3台で別々の現場から回収し、自社拠点で10tトラック1台に積み替えて処分場へ。
  • 中継拠点としての利用: 遠方の処分場へ行く前に、一時的にストックして、翌朝一番で出発する。

5. よくある質問

Q1. 荷物を降ろさず、トラックを乗り換えるだけでも「積み替え保管」の許可は必要ですか?

A. はい、必要です。 たとえ廃棄物を地面に降ろさなくても、コンテナを別の車両に載せ替えたり、車両から車両へ直接荷物を移し替えたりする行為は「積み替え」に該当します。

Q2. 自社の空き地に「一時的に」置いておくだけなら、許可は不要ですよね?

A. いいえ、たとえ数時間であっても許可が必要です。 許可のない場所で一度でも廃棄物を降ろして保管すれば、それは「不適切な保管」とみなされ、行政処分や罰則を受けるリスクがあります。

Q3. 保管できる量や期間に制限はありますか?

A. 厳格な制限があります。 保管して良い量は、原則として「その場所から運び出す1日あたりの平均運搬量の7日分以内」と法律で定められています。

Q4. 「積み替え保管」の許可を取れば、その場所でゴミを細かく分ける(選別)をしてもいいですか?

A. 原則として「選別」はできません。 選別や破砕・圧縮などを行う場合は、収集運搬業ではなく「中間処理業」の許可が別途必要になります。


6.積替え保管の「理想」と「現実」

輸送効率を劇的に高めるこの許可は、多くの事業者様にとって憧れの経営戦略です。しかし、ここ静岡県においては、その取得のハードルは全国でも屈指の高さと言わざるを得ません。

静岡県で取得が「原則困難」と言われる最大の理由

静岡県や県内の各政令市において、積み替え保管の新規許可が非常に厳しいのは、行政が「排出事業者責任(マニフェストのトレーサビリティ)」を極めて重視しているからです。

  • 混合のリスク: 複数の現場から集めた廃棄物が混ざり、排出元が特定できなくなることを懸念しています。
  • 責任の曖昧化: 排出元が特定できない状態は、廃棄物処理法の根本を揺るがす問題とみなされます。

このため、静岡県行政書士会としては「原則として新規取得は困難」という厳しい見解が示されています。


7.それでも「積替え保管許可」取得を目指す方へ

「思い立ってから許可証を手に受領するまで」の流れを解説します。

フェーズ1:事前調査と土地の確認

  • 用途地域の確認: 工業専用地域以外では厳しい制限があるケースが多いです。
  • 他法令のチェック: 消防法、建築基準法、農地法、自治体独自の条例に抵触しないか確認します。

フェーズ2:自治体との事前協議【最重要】

静岡県内ではここが最大の関門です。「なぜ必要か」「どうやって混合を防ぐか」を説明し、行政の指導を受けながら計画を練り直します。

フェーズ3:施設工事と本申請

事前協議で内諾を得てから、コンクリート舗装や囲いの設置などの実動に移ります。

フェーズ4:審査と現地調査

申請受理から約60日が目安です。役所の担当者が現地を訪れ、図面通りに施設ができているか厳格にチェックします。


スケジュールまとめ

事前調査 1〜2ヶ月

土地の地目・用途地域・法令チェック

事前協議 3〜8ヶ月

自治体窓口との交渉・修正・住民説明

施設整備・申請準備 1〜2ヶ月

工事・備品発注・本申請書類作成

審査(本申請後) 約2ヶ月

現地調査・書類審査・許可証発行

合計期間 約7ヶ月〜1年以上

※自治体との協議状況により変動します

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