「遺言書」と聞くとどんなイメージを持たれますか?
「遺言書=死への準備」と思われる方が多いかもしれません。そして、縁起が悪いと・・・
たしかに私も遺言書は死への準備だと思います。しかし、決して縁起が悪いものだとは思っていません。
ご気分を悪くされる方がいたら申し訳ないのですが、、、人は必ず死にます。その準備をすることのどこが縁起が悪いのだろう!と、私は思っています。
遺言書を遺すことのメリット(利点)はたくさんあります。この記事では「遺言書で出来ること」及び「遺言書のメリット」についてお伝えします。
遺言書で出来ること
まず遺言書に書いてはいけないことは、基本的にはありません。しかし、遺言書に書いたからと言ってすべての内容が効力を持つわけではありません。そして、効力のある内容の事を法的効力といいます。
法的効力を持つもの
遺贈
相続人以外の第三者に財産を遺すことが出来ます。
法定相続分と異なる相続分の指定
法定相続分とは異なる相続割合として、相続人それぞれの相続分を指定することができます。
相続人ごとに相続させる財産の指定
誰にどの財産を相続させるのか指定できます。
遺産分割の禁止
5年を超えない範囲で遺産の分割を禁止することが出来ます。
相続人に未成年がいる場合などに用いられることが多いです。
遺留分侵害額の負担順序の指定
遺留分侵害額請求をされた際の、負担順序及び負担割合を指定できます。
相続人相互の担保責任の減免・加重
遺産分割後にその相続を受けた財産に欠陥があって損害を受けた時、相続人同士はお互いの相続分に応じて保障しあうことが義務となっていますが、遺言でその義務を軽減したり加重することができます。
特別受益の持ち戻しの免除
遺言執行者の指定
遺言書の効力が発生するのは、死亡時です。そのため亡くなった方は、遺言書の内容が実現するよう監督することが出来ません。遺言書の内容を実現させる者を、遺言執行者と言います。
遺言執行者は、ご遺族でも法律の専門家でも、又はその両方でも構いません。
認知
婚外の子を死後認知することができ、認知された子は相続人となることができます。
相続人の廃除・取り消し
「被相続人に対して虐待をしたとき」「被相続人に重大な侮辱を加えたとき」「その他の著しい非行があったとき」、これらの事実があったときに相続人排除の申立てをすることが出来ます。家庭裁判所への排除の申立ては、遺言執行者が行うため、遺言書で遺言執行者を専任する必要があります。
未成年後見人の指定
相続人の中に未成年者がいて親権者がいない場合は、遺言によって後見人を指定することができます。
祭祀主宰者の指定
生命保険の受取人の指定・変更
遺言書を遺すことのメリット
遺産を自由に分けることが出来る(遺留分があるため限界はあります)
遺言書は亡くなった方の最後の意思として「最大限に尊重されるべきもの」とされています。亡くなった方が、生涯を掛けて築き上げてきた財産なのですから当然の権利です。
例えば、内縁の妻や、介護をしてくれた息子さんの奥様、お孫さんなど法定相続人でない方には、遺言書を遺すか、生前に贈与しなければ財産を渡すことが出来ません。
遺言書さえあれば、誰にでも自由に財産を譲ることが出来ます。
相続の手続きがスムーズになる
こちらは亡くなった方ではなくご遺族のメリットになるのですが、相続手続きがスムーズに進みます。
預貯金・株式・不動産・自動車などの名義変更の際は、遺言書もしくは相続人全員の署名・押印のある遺産分割協議書の添付が求められます。
遺言書がない場合には、相続人全員で遺産の分け方を決める遺産分割協議を成立させる必要があります。認知症の方、未成年の方は遺産分割協議に参加できないため、それぞれ後見人、未成年後見人を専任する必要があります。その上、遺産分割協議は1人でも反対の相続人がいると成立しません。
遺言書があれば、遺産分割協議書は必要ありません。
さらに、遺言執行者(遺言の内容を実現する人)を指定すれば、遺言の内容を速やかに実現する義務があるため手続きがよりスムーズになります。
認知症と診断されたら
認知症と診断されたら、相続対策は出来なくなるとお考えください。認知症の方は法律上、意思能力のない人として扱われる可能性があります。意思能力のない中で行った法律行為(遺言や生前贈与など)はすべて無効となってしまいます。上記でご説明した「法的効力」を持たないということです。
平成22年に厚生労働省が発表したデータでは、65歳以上の方のうち、15%の方が既に認知症を発症している事、認知症の疑いがある方も含めると実に約28%もいるとされています。
遺言書なんてまだ早いと言わずに早めの準備をおすすめします。